一歩/anne
 
わたしはもう

一歩も進めそうにありません

思い出という名の紐に とらわれて
がんじがらめになって

一歩も進めそうにありません

いつか 綺麗だと思った思い出たちが
今は わたしを捕らえます

いや 綺麗だと思った時点で
もう動けなくなっていたのかもしれないけれど

一歩も進めそうにありません

紐を 取り去る勇気もないのだから
捨てきる勇気もないのだから

ひとつの束にたばねて
どこまでもつれていこうと
そんな考えが甘かったのです

わたしは あまりの痛みに
涙が


何故だか涙が

あふれて


それでもどこかで
紐を綺麗だと思っている

捨てる勇気などないのだから

わたしはもう

一歩も


進めそうにありません
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