雑記/吉田ぐんじょう
だかわたしに
とてもよく似ていた
初夏は変なことばかり起こるので楽しい
すべすべになった体で笑うと
窓の外で星がひとつ
バターのように溶けて流れた
・
野菜室を開けて
こんばんは
夕食を作りに来ましたよ
と挨拶すると
野菜たちは一斉に冷気を吐いて
ふうっと
諦めるみたいに笑った
手にしっくりとくるのは
やっぱりいつだって人参だ
ひんやりと堅い人参は
仕事ばかりして
家事もろくに手伝わないわたしの掌を
まるで許すかのように
夕暮れ色に染めてくれる
物言わぬ野菜たちは
ただ果てしなく優しい
切り刻んでころしても
文句ひとつ言わないばかりか
沸騰したお湯の中で
溶けてしまうまで踊ってくれる
背後ではニュースキャスターが
BGMのように殺人事件を伝えて
網戸から吹きこむ風は
えだまめのにおいがする
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