雑記/吉田ぐんじょう
 
だかわたしに
とてもよく似ていた

初夏は変なことばかり起こるので楽しい

すべすべになった体で笑うと
窓の外で星がひとつ
バターのように溶けて流れた


野菜室を開けて
こんばんは
夕食を作りに来ましたよ
と挨拶すると
野菜たちは一斉に冷気を吐いて
ふうっと
諦めるみたいに笑った

手にしっくりとくるのは
やっぱりいつだって人参だ
ひんやりと堅い人参は
仕事ばかりして
家事もろくに手伝わないわたしの掌を
まるで許すかのように
夕暮れ色に染めてくれる

物言わぬ野菜たちは
ただ果てしなく優しい

切り刻んでころしても
文句ひとつ言わないばかりか
沸騰したお湯の中で
溶けてしまうまで踊ってくれる

背後ではニュースキャスターが
BGMのように殺人事件を伝えて

網戸から吹きこむ風は
えだまめのにおいがする



戻る   Point(22)