雨男と雨女/吉田ぐんじょう
小学生のころ
仲が良かった友人の家の
お父さんは雨男で
お母さんは雨女だった
家に行くたびいつも羨ましかった
彼女の家の中はいつも雨で
じゅうたんにも床にもトイレにも
まるで熱帯のように
さまざまな植物が生えていたから
わたしたちはままごとをしながら
その辺に生っているバナナを食べ
黄色い傘を差したまま折り紙をした
折り紙はもちろんすぐに
ぐずぐずになってしまったけれど
それを友人のお父さんにあげたら
お父さんは喜んで
更に強い雨を降らせてくれたし
お母さんはそれを見て笑いながら
うれし涙を少しこぼして
足元か
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