理想の世界/円谷一
時間が流れる
僕は君の傘で雨宿りをし 君と飽きることなく尽きることなく話し続ける
なんでもいいんだ 話は でも 全てが僕にとって重要なものである
一向に止まない僕の雨 君は表情を変えることなく 遠くを見つめている
そろそろ森へ入ろうか と僕は言う
君は頷くが 入ろうとはしない
君にとって 僕にとって この場所が永遠なのだ
森へ入ることは進み続けることを意味する
決して立ち止まることはできない
僕達は 死に続けている
均等な雨 思考を促す追憶の彼方
僕は君に完璧を求めているのかもしれない
季節はいつまでも初夏
隔絶された頭の片隅にある小さな世界
君は消えて 傘だけが残って 柄に温もりだけが残って
その温もりだけを両手で包み込みながら
微かな不安を与える森が巨大化していくのを傍で肌で切実に感じている
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