白いタルタルソースの伝説(1/2)/hon
 
内に響いた。
「発言から夾雑物を排して、簡明を旨とするように」裁判長は目頭を指の腹で押さえた。「というのは、はやく帰りたいのでね」
 実際、疲れてよどんだ寡黙が法廷をおおっていた。傍聴席は閑散として人影がなく、左の隅の座席にただ一人、ちりちりの頭髪の中年男が眠そうな目つきをして座っていた。
「わかります。わかります。だが、あなたはそうおっしゃるけれど、まったく、ぼくには一生の問題なんです」と平助は痛切に訴えた。
「誰だって抱えているのは実に一生の問題だよ」と裁判長は言った。
 そのなにげない一言に平助はちょっとひるんだ。
 ――なるほど、ぼくの量刑の問題と裁判長の帰宅の問題を一緒くたに
[次のページ]
戻る   Point(1)