無花果/shu
り開き
ゼリー状の赤い果肉のような海にダイブする
口が割れ
瞳がさざめき
プルプルと震える襞
透き通るような肋骨に頬を寄せると
忘れ去られた時がつららのように乱立している
それを叩くと不思議な音がして
ぽきんと折れる
あなたはそれを奥歯で砕いて
口の中でその冷たさを頬張って
長い長いキスをする
舌に絡まるシャーベット
ぐしゃぐしゃに泣きながら
あなたを頬張る
あなたはわたしを頬張る
ぐちょぐちょになって
ぐちょぐちょのままで叫びあう
濡れて
震えて
呼吸に触って
交じって弾けて
脊髄がぐいとひっぱられ
粘膜と繊毛に覆われた皮が
そっくり捲りあがり
互いの体に巻きついて
包み込む
そうして塊になって
冷たい空気にさらされながら
夜にぶらさがって眠る
じっと息を潜めて
ひらかれる密かな痛みを待ち望み
外からはみえない小さな花を咲かす
無花果のように
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