ブルーバス/虹村 凌
もう百円玉じゃ温もりは買えなくなった
冷たい缶コーヒーを握り締めて
さめざめと泣いたり出来れば
明日の朝は幸せなんだろうか
どうせなら何処か遠くで目覚めたくなって
小さい窓から這い出して
薄明るい夜のとばりの中へと踏み出した
行き先がわからない青いバスが止まったから
運転手さんに頼み込んで乗せてもらった
賄賂を贈って見返りに貰った旅券で乗った
赤いスタンプが滲んで弾けて
バスはドアを閉めて走り出した
夢見が悪くて何度も目覚めた
硬いシートなのにまるで包まれるように
うずくまって眠っていた事にしばらく気付かなかった
涎かと思っていたら涙だった事にも気付かなか
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