小説『Is it no use crying over spilt milk?』(7)/
 
ふと、立ち止まる。
目の前には人だかりと大型のトラック。いつもの暴走トラックが煙を吐きながら街道に突っ込んでいた。とうとう事故を起こしてしまったようだ。
だから、自分達は去年からずっと言い続けていたのだ。
起こってしまった事は取り返しがつかない。何の対策も講じてこなかった彼らは、その漫然と過ごした一年に対する責任をとらなければならない。
この騒ぎでは流石に彼女も帰ってしまったかもしれない。僕は人だかりを掻き分けて、彼女を探してみた。いつもの場所まで辿り着いた。

サイレンの音が鳴り響く。

雪だるまは壊されていた。おそらくトラックによるものだろう。

その周囲には彼女の持ち物が散乱していた。大学の教科書、楽譜、ギター。
壊れた雪だるまはただじっと、酷く哀しげな顔でそれらを見つめている・・・。

サイレンの音が遠ざかっていく。
いくら探しても彼女は見付からなくて、僕はしばらくの間雪だるまの前で膝を落としていた。

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