「もうこれ以上叩かないでくれ」/ベンジャミン
 

りぃ りぃ りぃ と雨が降り
渇いた大地を潤してゆく

六月は
晴れたり曇ったり
そしてこんなにも雨が降ったり

(もうこれ以上叩かないでくれ)

庭にはやっと咲いた花たちが
手のひらを空にむけている
それは何かを求めるように見えて
それが彼らの習性なのだろうが
容赦なく降りそそぐ雨は
彼らの無垢な横顔を
もてあそぶように叩いている

(もうこれ以上叩かないでくれ)

りぃ りぃ りぃ と雨が降り
渇いた心を潤してゆく

でももう充分だ
庭に咲いた小さな花は
もうたくさんの水分を吸収して
そうしていっぱいいっぱいになって
とぼとぼと花びらから涙のような雫を流し
それでも懸命に咲き続けようとしているじゃないか

りぃ りぃ りぃ と雨が降る
渇いた大地と渇いた心に雨が降る

それが自然の営みだとは
わかっていても

(もうこれ以上叩かないでくれ)

せっかくきれいに咲いた花たちが
どうにも悲しく見えてしまう



       
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