別れの挨拶/たもつ
で
コロクはゆっくりと土に返りました
その過程で胃袋に入っていた一粒の種子が発芽し
芽はぐんぐんと成長し
そして数十年の歳月を経て大きな木になったのです
その間マジシャンは旅先でその生涯を終えました
訃報を聞いた彼の息子は父の遺志を継ぎ
今、マジシャンとして旅を続けています
夏の暑い日のこと
草原の中に一本だけ立っている木を見つけた彼は
その木陰で二時間昼寝をしました
それはコロクの木でした
彼の父はマジシャンとしてその生涯を閉じました
恐らくその息子である彼も
そしてコロクの木は生き続けるのです
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