無謬のワルツ/hon
 
断続的に降る雨からハッカと血の匂いが漂った
あの徒刑の夏から、ハッカと血と雨とは混ざりあっていた

断続的に逃れる排水溝から排水溝へ、ひとの話を信じないぼくと
自分の話を話さないきみと、秒針の背後が往復をはじめるとき

なぜなら、断続的にルフランを書きつける貸借表の余白に
黒ずんだ大気の研磨剤が、暗室の屍体への無理解を見出した

降りつのる雨はなべて生ぬるい反時計回りの渦を巻く
北半球の窓枠といえば、断続的に裂けてゆく肉体のakaい核と

十二時を跨ぐという、吊るされた鏡台のあらゆる夜の裏側から
akaい犯罪の刻印、あの徒刑の夏からぼくは暗室を脱いで

晒される十二時の夏を跨ごうとする伏流のさなかで形をかえる
十二時を跨ぎつつ降りつのる雨は生活排水を逆流する機関

十二時のハッカが淀んだ排水溝で断続的な秒針を裂く直前に
鏡台のakaい大気の夏とぼくの無謬のワルツとは暗室で跨ぎあう
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