孤立ドールシャウエッセン/カンチェルスキス
 
おれが思った矢先、黙って見守ってたマスターが、床だ、と言ったので、言われなくてもわかってるぜ、床だ、床平民ピザだ、とおれは怒鳴った。
 裏返しになってる具を正面に向かせた。ピーマンの輪切りやソーセージの輪切りなんかの顔がちゃんと見える。これでちゃんとした床平民ピザだ。おれは膝まづいて、食らった。床がトーストであり、もっと言えば、この地球がトーストだ。地球にのっかってるピザトーストの具を食らう。よく言うじゃないか。釣りをしてて、根がかりしたら、あれっ、地球を釣っちゃったよ、って仲間にだらしない笑顔を向けるなんてこと。それと同じで、おれは地球ピザトーストを食いながら、マスターにだらしない笑顔を向けた。マスターは目を閉じ、頬杖しながら、有線でかかってるテレサテンに耳を傾けていた。おれは喉が渇いたから、膝まづいたまま、皿コーヒーを啜った。
 おれは孤立していた。
 






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