黒い瞬き/doon
 

 私達は実に多くの物に触れていた
 いや、どこか語りに欠けるものがある
 触れていて
 生という得体の知れない獣に
 愛情の紅さを見ていたのだろう
 血色の涙が呼吸となる
 焔の雨

 夜はこうもシンと鳴り響いているではないか
 私は一辺の部屋角に
 走り抜ける黒い者を見た
 戦き、手は探りを入れる

 血が沸騰する
 奴を殺せと
 血は鉛色に腐っていた

 幻覚は小さな猜疑心を目覚めさせ
 自分が探していたものを打ち払い
 生まれる
 奇怪な殺人冥利
 ないているのは
 蟲だろうか
 私だろうか

 羽はブーーンと鳴り
 夜はシンと返す


 焼酎の中に
 丸い夜の月が
 やっと帰ってきた
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