たぶんトロイメライ/朽木 裕
 
夜勤明け、眠ることに勤しんで迎えた午後6時。私は唐突に髪を切りに行くことに決めた。いや、以前から決めていたのかも知れない。なにしろ私の前髪は鼻を越す長さだったので。

(この日常はただのノイズ。明日には何もかも消えるわ)

洗髪で眠り、髪を切られながら眠り、マッサージを受けながら眠った。諾々と記憶に残らぬお喋りを義務のように終えた頃、私の髪は随分と軽くなっていた。

(自分のことを強いと思っている人なんていない。きっとそうだと思う)

ギリ、とわけも無く下唇を噛んで、途方もない目眩。空耳が聞こえたりした。そこにある筈もない踏切の警鐘音など。

(ああ、誰にも否定されたくはないの
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