失語から生きる/岡部淳太郎
先日、横浜詩人会が主催するイベントに行ってきた。JR関内駅から歩いて数分、横浜スタジアムの近くにあるZAIMという古いビルの中のミニシアターで行なわれたものだ。第一部は横浜詩人会会員によるポエトリー・リーディングで、私も拙いながらも二篇の自作詩を朗読した。そして、第二部がノンフィクション作家の多田茂治氏による石原吉郎についての講演。
石原吉郎は大戦中に従軍して満州に渡り、日本の敗戦によってソ連に捕らえられ、シベリアの強制収容所で重労働を課せられた。その後、帰国してから自らの体験を追認するように詩を書き、詩集『サンチョ・パンサの帰郷』によってH氏賞を受賞して詩壇での地位を占めるようになった。そ
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