不安の輪郭/渡 ひろこ
溜め息でできた曇りガラス
微妙に感じる温度差
胸の中にぽっかり現れそうな空洞
もう囀れない歌えぬカナリア に
なってしまうのだろうか
味わってしまった夢は泡沫のよう
いっときの刹那
別の世界を覗いていたいだけなのに
あなたとつなぐ細い華奢なラインが
壊れていくのがわかる
鍵が開けたままの鳥かごでじっと待っているのに
*
陽がかたむいて 茜色が部屋を染めていく
ぼんやりと炊飯器の音がきこえる
夕餉の時が刻まれていく
遠くなる日常が繰り返される
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