ちゃいろい/
花平すり
古本屋の中で
眠ってた
本を抱いて
それは湿気ていて
暖かかった
店番の
おじいさんは
お弁当を食べていて
たまに
お茶をずずーっと
すする音
幼稚園から
逃げ出してきた鶏が
ぼくのまえを
こつこつ歩いていた
おじいさんは
お弁当を食べ終わって
電話で
昔話をしている
ぼくは
本を枕みたいに抱いたまま
おじいさんの
昔話をきいていた
鶏も
たぶん、きいていた
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