山羊と桟橋/肉食のすずめ
 
告げた友人の気象予報士と
話をする事はもう友人でなくなったのでなくなった
小刻みに緩やかに
東から澄んだ波が寄せて広がって
雷雲は稀になって散って
送られてしまうのだろうな
男は鼻を口で結んで息を止めた
ただもはや
時間の問題だ
お前が何も言わなくたって
俺の声は結び目を開くのだろうな
しかしそれにもやはり
時間が必要だ
だろうな

昨日の船が最後だった
それに乗ることもできたけれど
乗らなかった今となっては
今後乗ることはないだろう
だからもう泳ぎ切るしかないのだろう
泳ぎ切ることもあるいはできるだろう
そして泳ぐことはきっと
しないだろう

強引だったから
頑固だったから
終わってしまいそうだった
あまりにも
とりつかれていた
かったから

今朝も
男は太陽より先に桟橋に向かって
鎖を調べる
これから晴れ渡る三十年間の
昨日と今日との
わずかな距離を繋いでいく現実が
沖へ流れていかないように
意味を越えて
続いていくように
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