山羊と桟橋/肉食のすずめ
これは
その日もまた風の吹く日で
風の吹く日の桟橋は弾んだ
黒い深い雲は西へと進み
それでいて天上から尽きる事はなかった
赤銅色の鉄板が跳ね上がる
同色の鎖は少しも流れていかないように
桟橋を町に繋いでいる
跳ね上がる鉄板の上
白毛の奥で眼を光らせた
顔も体も山羊状の男は歩いて
仕事をしていた
暖かい湿気に肩の力を抜いて
鎖の破損具合を調べていた
近くで雷が鳴ると
山羊男の背中は逆立った
遠くで雷が鳴ると
山羊男の背中は膨んだ
山の山羊が雷に怯える
そのようなときに山羊男の背中は笑った
昔の話の全て
来年から
雲は全て遠景になるらしいな
と告げ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)