喪失/doon
失う前のそれを ひっそりと
声に出して呼んでみたが
むなしい
虚しいばかりだった
私はいつから失ったのか
いや
私達はいつから失うのか
そっとなぞってみたい
か細い女性の指先で
閃く音が
鐘の音に勝るだろうか
あと一つ前で、失う前を知るというのに
失ってしまってからでは
その一歩をどうやって越えればいいか
分からない
テキストは ――ない
塾は ――ない
どこにある どこへいけばある
針のように尖った思いが もう一度
歩くという足が
こんなに憎いと思う時はない
止まらないお前を消したいと
こんなに思う事はない
形の無い物を
形のないまま過ごすという事を
許せるほど
私は優しくなれなかった
友よ!
我が友よ!
私が最後にさよならといったのは
いつだったか!
いつだったのだ!
友よ!
我が友等よ!
戻る 編 削 Point(2)