19P 「短歌2」より 昭和四十六年/むさこ
 

猫の毛並誉めて帰りの客の背に
急に舞いきし小雪がかかる

じみな服着る吾れに娘が口紅を
つけよと はたに寄りきてぞ言ふ

すっきりとせざる胸うち雪となる
気配の空に雲低くたる

産近き猫がいびきをかきたてゐむ
外の吹雪に独り居の昼

吊り革に下れば声あり荷を持つと
言い呉れし紳士 髪白きなり


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