より鮮やかになっていく/いねむり猫
 

私は じっと心の奥底で
身を潜めていなければならない思い出

なぜ私が封印されたのか
もう忘れてしまった

ただ、私が想起のフィールドに
浮かび上がると
警報が鳴り響いて
私は再び記憶の沼に
沈められてしまう

私は 
決して思い出されてはいけない
出来事

意味を貼り付けられて
身動きのできない
夏休みの昆虫標本なのです

そして 記憶の沼に沈められる度に
より鮮やかになっていく
踏みにじられたトマトなのです

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