南瓜の馬車/はな
ふだん
ねむっているひとに
いきなりの乗馬は
たぶん
きびしいから
南瓜に
窓を
そのままいのちのような
生ぬるい 風はまだ
うすまった春を連れていて
やねのさきからこぼれる、しずくや
水たまりに落ちたきょうのかげを
さらってゆく、
さいしょから
なにも
なかったみたいに
かわいた
よるの
ライターの、火、こぼれて
ほどけてゆくあわい夏の音が
ほほに
ただ あたる
あなたが
ぶこつな手で
風を
南瓜の馬車に とおす
そっと
おかえり
をつぶやくように
だまったまま
小さな刃は
橙の光を
すきとおったじかんへと
ともすので
わたしは
南瓜スープをつくる
準備を
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