あまのがわ/前田ふむふむ
 
めに、
躰を丁寧にたたんでいる。

座席に漂う、青く骨ばった息つぎ。
眼に映る、もえあがる新緑に充ちている春が、
わたしの手から、滲み出てきて、
込み上げる高揚を、口に切れば、
かわいた声は、全身の座席に、立ちのぼってくる。

講演台には、ガラス瓶の水差しが、中央に浮びあがり、
あなたの亜麻色の髪が、水差しのなかで、
雨に濡れている。
その、止まっている水滴のむこうに、
瑞々しい言葉の廃墟が、広大に走り、
きらきらとひかる、あたたかい、
あまのがわが、視える。


戻る   Point(34)