来訪/かや
 
回り切ったレコードが
すっと静寂を引き戻すと
窓ガラスに雨粒がぱらぱらと落ちている

照明の橙と
電気スタンドの白い光が
紅茶の湯気を溶かして
訪れる
こんな日はいつも

秋の雨は思うほど
冷たくないの、と言い訳するみたいに笑った
伝う雫は連なって細い体を潤していた
それに見惚れて
僕は気付いてやれなかった

水溜まりを撥ねながら車が遠ざかる
酔いに浮かれた鼻唄が
ゆっくり通り過ぎていく

赤色の傘は開かれないまま
追いかけなかった僕を責めて

あまり濡れてはいけない
夜はまだ 冷えるから、

一人よがりを甘く包む
雨の季節が来る




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