井戸/はじめ
森の前の枯れた古井戸は村からしばらく曲がりくねった道の先にある 今日も先に井戸の所まで行って 君が拵えた縄の梯子を下りて井戸の底に足をつける 底の土は少し黒ずんでいて、靴で掘り返してみても 小石などは見えてこない 掘り返した黒い土を埋め、井戸の湿気が上昇していくのを感じる 空は青く、閉塞感を感じる 比較的小綺麗な井戸は(手入れを加えたのだ) 煙突のようにも見える ここで薪を燃やせば、まさに街の工場の煙突に見えるだろう(自分だけだ) そんな馬鹿な考えをした 石の壁によりかかって、マッチで煙草に火を付ける マッチの燃える匂いが気にくわない 底には無数のマッチの燃え滓が落ちてある 前を向いた時 視線の
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