匂い/たけ いたけ
 


今朝から眼鏡の手入れをしている
透き通ったリンゴが
近づいては離れていった

明日から得た切符は
どことなく頼りなく
手元で伏せる

汽車に乗る
時間が乗客
会話が聞こえる
望んだ日時に降り立つ
各駅停車は無い
駅各々が飛散している

静かに始まる胎動に手を入れ
砂漠が広がる子宮


鳥が飛ぶ
飛ぶ
飛ぶ
飛行船の匂いがする




目の前を交差する雲
高層ビルの屋上と1階のロビーとわきの雑草と屋根裏
屋根と屋根を追いかけていくと
大きな高波に襲われていた
フォークの先端の行進
電子基盤の上を走る電気
それ自体が行進

[次のページ]
戻る   Point(6)