匂い/たけ いたけ
1
今朝から眼鏡の手入れをしている
透き通ったリンゴが
近づいては離れていった
明日から得た切符は
どことなく頼りなく
手元で伏せる
汽車に乗る
時間が乗客
会話が聞こえる
望んだ日時に降り立つ
各駅停車は無い
駅各々が飛散している
静かに始まる胎動に手を入れ
砂漠が広がる子宮
鳥が飛ぶ
飛ぶ
飛ぶ
飛行船の匂いがする
2
目の前を交差する雲
高層ビルの屋上と1階のロビーとわきの雑草と屋根裏
屋根と屋根を追いかけていくと
大きな高波に襲われていた
フォークの先端の行進
電子基盤の上を走る電気
それ自体が行進
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