砂のこえがきこえるように……/輪橋 秀綺
ゆーゆゆ ゆゆゆゆ ゆー ゆゆゆ ……
旋律を歌ってみても ひとりぼっちだ
沖から岸へ 塗りつぶすように寄せる涙の成分は
平泳ぎなどでおだやかに泳いでいるぼくの体に蓄積する
なんだか 切ない
昔会った大切な誰か のことを忘れてしまった
ということだけを覚えているようなもどかしさで
岸に戻ろうとする頃には 慣れているはずの泳ぎが 少しばかりぎこちない
浜に上がったぼくはそのまま海を見ていた
ときどき風が吹いてくると正直冷たい
それでも日差しは強く 砂は暖かく
こんな日には蟹やらが 何を探しているんだい などと
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