スベスベマンジュウガニ饅頭/たもつ
 
午後六時三十分から七時までの僅か三十分だけであるが
彼らにも当然のことながら、一日があり、毎日があり、四季がある
波平のスベスベした頭の天辺に残った一本の毛
それはこの物語のシンボルとも言える
戦後、高度成長期、バブル、そしてその崩壊
そういった時代の荒波の中でも挫けることなく生きてきた魂である
サザエの誕生からカツオの誕生までのおそらく十数年の間に果たして何があったのか
という疑問を抱きながらも、あの歳で二人の子作りに成功した波平、フネの夫婦に
誰もが涙し、拍手喝采を送る
この永遠に歳をとることがない家族の物語に終止符が打たれるとき
最後の一本の毛を自らの手で抜こう、と波平は決心している
そんな波平の心意気など知る由もなくスベスベマンジュウガニ氏は
ドウゾドウゾ、笑顔で饅頭を勧める
ええい、ままよ、波平は恐る恐る饅頭に手を伸ばす
家長である自分が家族を守らなければ!
その瞬間、タマにこっそりと饅頭を食べさせその安全を確認したカツオが電光石火でパクリ





戻る   Point(13)