輪廻の雨/千月 話子
ヘンリー 私の膝の上でお眠り
窓辺に当たる雨の音を聞きながら
時々は 可愛い耳をぴくんとさせて
解った振りをしてくれれば いい
ひとり言を 話すから
中庭で 遊ぶ子供等の声は無く
池の波紋は 色映す魚の機嫌を損ねてしまい
小鳥の羽は 濡れてしまった
墜落する雨の縦線が
突き出た洋館の丸い屋根を囲むように
鳥かごを作って
私達は つがい
寝息を立てて上下する柔らかな背中に
頬ずりをしてみる
手に取る本は ハイネが良い
お前が昔 私に詠った詩を読もう
その内 背表紙を持つ手の平から
一番ほのかな桃色が浮き
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