輪廻の雨/千月 話子
 

  ヘンリー 私の膝の上でお眠り
  窓辺に当たる雨の音を聞きながら
  
  時々は 可愛い耳をぴくんとさせて
  解った振りをしてくれれば いい

  ひとり言を 話すから


中庭で 遊ぶ子供等の声は無く
池の波紋は 色映す魚の機嫌を損ねてしまい
小鳥の羽は 濡れてしまった


墜落する雨の縦線が 
突き出た洋館の丸い屋根を囲むように
鳥かごを作って 
私達は つがい
寝息を立てて上下する柔らかな背中に
頬ずりをしてみる


手に取る本は ハイネが良い
お前が昔 私に詠った詩を読もう
その内 背表紙を持つ手の平から
一番ほのかな桃色が浮き
[次のページ]
戻る   Point(24)