沈黙のオペラ/鈴木カルラ
 
愛情は凍り、そして、砕けた
それは、砂塵となって、ゆっくりと舞い、踊る

破壊され尽くした劇場、舞台、静寂の支配する世界
沈黙のオペラの幕があがる


そう、オペラは
その結果に従って上演されたのだ

すべての残骸が天井を突き抜けてきた光りに眩しく起立する
動かぬ現実の廃墟として、物言わぬ背景として

折れてしまったままにオーケストラピットに散らばる、勇気
かつて、真実という曲を奏でた名演奏者たち
枯れて折り重なったそれらは、その隙間をぬける空気に曲をつける
虚無の曲を
静寂の曲を
無音の曲を奏でる

そう、充たされた空虚の舞台では、物語がすすんでゆく

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