君を尋ねて/はじめ
視界の見えない荒れ地を歩き続けた
しばらくすると街が見えてきた この街から君の心の匂いがするような気がした それは焼き立てのバターロールパンのような匂いだ 僕と君との思い出の匂い
街はひっそりと静まりかえっていた 時々馬車や野良犬が通りかかるだけで 煉瓦でできた街は心に染みるほど冷たかった ここに本当に君がいるのだろうか?
石畳の歩道を歩いていくと 一軒だけ明かりの灯ったパン屋があった 僕はきっと君がここにいるのだと思ってドアをノックした すると君が出てきた
僕は君を抱き締めた 君も僕を抱き締め返した 君はにっこりと微笑んで 僕の頭に降り積もった雪を払ってくれた 僕は君に今すぐ結婚しようと言った
君ももちろんええ と言ってくれた 僕達は長い長いキスをし 結婚をすることに決めた 現在 僕はこの街に住み 彼女と一緒にパン屋を営んで幸せに暮らしている
戻る 編 削 Point(1)