パッセンジャーズ/Rin K
 


あなたは乗るべき電車を
もう二本も見送ったひと
私は乗るべき電車を
ただ待ち続けるひと

きしむ轍は
それ以上には無口で
通過する窓の明かりに
みる幻夜橙(げんやとう)


  三 「ラストステイ」

発車のベルを
小指に結びつけたら
引きずられるか
指切りするか
それとも電車に
乗るしかないから
改札に置いてきた欠片は
ありがとうだったのだということにする

ふたたびとこの駅には
降りないだろう、わたし

あれほど強く握り合った手を
黙ってほどいていくように
口をひらいたまま凍りついていた
最初で最終の電車が
静かに駅を、はなれてゆく






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