ディラックの空/たりぽん(大理 奔)
 
はじめての深呼吸は
君に会えない夜に
街灯にうかれた虫たちを
見上げる時の角度で

  波を見上げる魚でもない
  雲を抜き去る鳥でもない

手に入れた感情の
空虚な その熱さ
埋めきれない時間と
立ち止まれない儚さで

  ひとでないものを夢見ても
  免罪符に逃げはしない

満たされても人は
海になれないから 
さびしいとき
こぼれ落ちてしまう


  波のかけらを
  ついばむ、渡り鳥!

大切なものを手に入れると
旅はこんなにも、永遠だ




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