海、あるいは水曜日の三時間目/Utakata
けで
適切な言葉を一つ見つけるたびに
適切な物事を一つずつ几帳面に忘れていったというだけのことだった
僕たちはアフリカのサバンナに始めて両足を着けた類人猿だったし
懐かしそうに肺呼吸をしながら海を見つめていた蜥蜴だったし、
窮屈そうに最初の身じろぎをした一つの小さな燐酸の塊だった
遠くに見えた光に引かれてやってきた隕石の一つだったし
七秒後にやっと生まれた初めの水素原子の一つだったし
それで
適切な物事を一つずつ几帳面に忘れていったというだけのことだった
二十四本の水平線は
その間を汚すにはもったいないほど真っ直ぐで
結局僕たちは傷の目立つ木製の机の上に
鉛筆で
ぐるぐると
書きなぐったりするのだ
僕はこっそりと眼を閉じて
外の空と太陽のことを考えてみる
眼に眩しい鮮やかな呪いのことと
そこから見える二十五本目の水平線のことを
そう それは
水平線からやってきて
適切な言葉も物事もすべて
ゆっくりと噛み砕いていく
柔らかな
白い歯
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