サイコロを振る悪魔の掌/紫音
 

たちまち視界を取り戻す



置いてしまえばどうということはない言葉を
捨て置いたために気付いてしまう



  何を謳うべきかわからずに
  それでも綴られた言葉の中に

 果たして泣き笑い
  伝う詩は自生しているのか



 固く信じた気持ちの先が
 コーヒーの香りほどに不確かだとして
 そこに電気羊の夢は生まれるのか



独り身であることも
横に寝息を感じることも

月並みの笑顔も
当たり前の涙も

 湧き出る嗚咽の奥底に
  コーヒーほどの香りさえ無く


 キリマンジャロとブルーマウンテンの区別も付かないくせに

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