わたしのそばにそれがきたとき/美砂
林檎のジャムを一瓶、食べてもいいと
いわれたような気がした
大人みたいに好きなだけ、起きていてもいいと
いわれたような気がした
明日も、あさっても、その次の日も
ずっと日曜日みたいな気がした
ほんとうは、そういうのじゃたりない
9歳までのさみしさのぜんぶが
きえてゆくような気持ち
なぜ黒いの なぜ光ってるの なぜわたしがうつるの
宝石箱の蓋のよう、おそるおそるあければ
あった、あった、
たしかな重み、たしかな抵抗、たしかな反応
この音、ここからの音楽、ここからの物語
暗いところから、長く、細く、光がのびて
将来が照らされるよう、
わたしはこれで、
ずっと生きて
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