「ものとおん」#7−#9/リーフレイン
 
#7 
   夏の雨


少年の夏の葉には蛇の抜け殻の模様がついている
彼があの時流した涙は自己嫌悪の錆びた味がした
乳飲み子の口に含んだ乳は黄色くて甘い 母からもらう最初の贅沢
一生の間働きつかれ黒ずんだ農夫の爪を真綿に包もう
乙女の破瓜の瞬間に呑み込まれた甘美な悲鳴は誰の食卓に上っただろうか
朝一番に結ばれた芋の葉の露を舐めたのは、一夜中眠らなかった猫だった
今年最初の葡萄を頬張った幸運を 一行の詩に引き換えてしまった後悔
恋人の靴の軽快な音色
夜の風車の風音は泣き女の死者の予言に似ているから、
耳をすませてはいけない
女郎蜘蛛が食事をとった 祝祭の
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