最後に呟いた/doon
靴の中でいつまでも残る小石
無視できるほどのわずかな痛みなのだが
私は歩くのをためらった
寒い北風が忘れられない
ただコートを羽織ればいいだけなのだが
私はそれさえ考えられなかった
つい先日のように感じられる
無意に過ごした青春の時間
その時間の重さが
存在を超えて
今の私に積み重なる
寂しいと 誰かは言うのだろうか
悲しいと 彼らは言うのだろうか
侘しいと 知人は言うのだろうか
沈むと見事にたとえられた夕日が
眺めていたわずかの間に
辺りを暗く色づかせた
過去を振り返って
死にたいと言った私を
私以外の誰が
止められるのだろう
止められないだろう
それが
私が知った人間像
見つけてしまった人間像
この夜を見ている私はここに
ただ1人
まるで嘘のような
何所か本当のような
なんともいえない歯痒い心もちが
ポツンと残っていた
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