どこにもいない男/
麻生ゆり
彼はどこにもいない
会社にだって
公園にだって
トイレにだって
いない
それなのに彼は
どこにもいない植物を
育てている
何のために使うのかは
わからない
でもおそらく
それは観賞用だと思われる
なぜならば
彼は何もしないことが
好きだからだ
植物を育てているのも
彼の存在意義を
作っているようなもの
彼は
本当は不安なのだ
どこにもいないことで
焦っているのだ
だけどどこにもいない男は
今日も
どこにもいない
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