口笛/藤原有絵
 
めまいがするほど
一度どくんと心臓が跳ねて
膝につけた頬が重い
何度迎えても夏は早足で


あの歌が流れるたび
いないあなたの口笛がついてくる
今も泣けない苦しさで
胸がやぶけそうな夜もくる

目を閉じれば
会えてしまう気がして


あなたは一度がっかりさせて
喜ばせる事が大好きな
意地の悪い人だった


目を閉じても
会えない事はわかっている


あんなに長く傍にいても
並んで隣を歩けなかった
わけを
きっと私だけが知らなかった


夏の雨で
メロディがよく沁みる
今でも口笛の吹けない
不器用なわたしだと

語るあなたはもういない


せめて名の無い想いのまま
この歌よ
ひっそりと消えてください



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