「ものとおん」#5/リーフレイン
実の種を探す固い中指
手は箱から生まれでたものであった
ほんの少しの媚態が蜂を引き寄せる
琥珀色の蜜がとろけて
毟られるのをふるふると震えて待つ青い草が
猛々しい欲情を隠した唇に姿を変え
耐え切れずに噛み切って流れる朱が
まろやかな象牙色の柔らかいぎりぎりを握りこむ
種を地面に
硬くこわばった手で浅く柔らかな穴を掘り
糧となるものを埋け、水を注ぎ、
容赦のない双面の種を地面に蒔く
一対の腕は上腕の真ん中あたりから存在して なめらかな白い皮膚におおわれていた
細く蒼ざめた指が小刻みに震えている
それは等しく最初の腕と同じもので 全く同じものではない
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