「ものとおん」#5/リーフレイン
 
#5 
   一対の腕

それは決まって一対の腕で、上腕の真ん中あたりから唐突に存在していた
人のものより少し大きめの掌とごつごつした指と固い筋肉を持ち、
丁度そこに人が一人いるように闇の中を動きまわる
手はいつも容赦がなかった

白い箱を開ける
優しい手ではないので、
箱はひしゃげてしまい中身がだらだらと流れおちる
手は疎ましそうにその雫を払い、箱を放り投げ
どこからか杖をとりだして、箱を打つ
箱を広げていく
四つの面しかない箱であるのに、花びらを毟っていくように 幾枚もの面が広げられ
指が食い込んで 柔らかな中身に痕をつけた
桃の実の
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