「ものとおん」#2−#4/リーフレイン
 
#2

  雨の魚

雨に濡れながら歩いていると
死んだ魚の匂いが漂ってくることがある
湿った空気が ねっとりとまつわりつき
地球が水の星だったことを思い出す

そんな時、あたしの横には本当に死んだ魚が
ぎちぎちと目を光らせながら泳いでいる
少し膨らんでしまった腹を斜めにかしぎながら
ゆらゆらと ぷかぷかと
匂いは ほんの束の間で、
通り過ぎると同時にすっと掻き消えてしまった

足元に蛇の死骸を見つけた
車輪でひき潰されてしまったようで
腹の一部がへこんでいた
死骸は硬い
蛇のつややかな柔軟さはもう失われている

アリランブルーという名の紫陽花が

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