居場所 〜ヒナギク〜/doon
 

 同じ花で
 同じシチュエーションで
 別れを告げることを思いついて
 花屋に行って
 ヒナギクの花を選んでしまった

 ――あの時

 手にした1輪のヒナギクがいう
 君がどんな気持ちで置いたのか
 あの時と何も変わらない
 全部一緒だ

 直線100メートル、マンションに続く道
 703号室が遠い
 あの時の君のように
 たくさんの事を思い浮かべながら
 いま、あの子が泣かないで
 どうか声を出さないで
 ヒナギクが
 1輪だけのヒナギクが伝える場所を
 また机の上に与える

 遠い
 目頭が熱くなったが
 泣けなかった
 泣いたら
 このヒナギクさえも
 涙を流すのだから
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