居場所 〜ヒナギク〜/doon
 

 陽も明瞭さにかけた頃
 ドアの向こうに
 霞んだ香水のにおいがあった
 机の上の花が ――1輪の花が目に入った

 ヒナギクの花

 部屋の明かりは消えているのに
 なぜか
 その花だけが日の光に当たり
 花の鼓動までが聞こえるようだった

 靴を履くのも忘れて
 外へ飛び出した
 名前を呼ぼうとして
 一番星が私を
 私から声という声を奪った

 声はどこへ行くのか
 充満した空気に溶け込んで
 何処かへ行ってしまう
 それが怖くて
 叫べなかった

 叫ばなくても何とか耐えられたのは
 まったくの同じだった


 私が新しい人に

[次のページ]
戻る   Point(2)