居場所 〜ヒナギク〜/doon
陽も明瞭さにかけた頃
ドアの向こうに
霞んだ香水のにおいがあった
机の上の花が ――1輪の花が目に入った
ヒナギクの花
部屋の明かりは消えているのに
なぜか
その花だけが日の光に当たり
花の鼓動までが聞こえるようだった
靴を履くのも忘れて
外へ飛び出した
名前を呼ぼうとして
一番星が私を
私から声という声を奪った
声はどこへ行くのか
充満した空気に溶け込んで
何処かへ行ってしまう
それが怖くて
叫べなかった
叫ばなくても何とか耐えられたのは
まったくの同じだった
私が新しい人に
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