遥かなるバベル/いねむり猫
都心の夜空にそびえ立つ
遥かなるバベル
地中から湧上る人々が
巡礼のように押し寄せ 群れる
その明かりの下には
塔を創った人間とはなんの関係もない人々が集う
現代のバベルに灯る光は 小さく気まぐれで卑しい
塔の持つ強大な力とはつながりの無い
寄生するだけの人々の夕べは
風にまたたく蛍の光のように
塔に張り付いている
遥かなるバベル
巨大な建築物に込められた決意
人々の力を集めるためには
人々の心を打ち抜き
人々に命を投げ出させる
無慈悲な祈りが必要だった
遥かなるバベルよ
数千年の時を越えて
おまえの係累がこの無残な街にそびえている
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