旅の夜明け 〜能登号にて〜 /服部 剛
 
つも隣にいてくれる 
黒いトランクが親友さ 

旅する時はいつだって 
長崎の天主堂で両手を合わせた時も 
長野の善光寺で小銭を投げた時も 
寂しがり屋なこの俺の 
愚痴を黙って聞いていた 
たった一人の親友さ 

ファスナーの 
開いた隙間の中身には 
金で買えない旅情の夢が 
ぎゅっとつまっているのだよ 

そろそろ 
到着前の目覚まし時計が 
旅の始まりを告げる頃だ 



 ※ 6月10日・午前5時・能登号車内にて 




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