夢の浜辺にて/銀猫
 

浅い眠りのなかに
潮の匂いと砂を踏みしめる音がして
わたしは海辺にいるらしかった

裸足に海水は冷たくはなく
貝殻の欠片を拾い上げても
その尖った先は指を刺さない

(きっと夢なのだろう)

少しかなしく諦めながら
浜辺を歩く

誰かに向かうでもなく
誰かと連れ添うでもなく
さくり、という音だけが真実味をもって
ただ夢の浜辺を歩いていく

ポケットを探ると
無造作にたたんだ便箋が入っており
幾度読もうとしても
文字が涙で滑り落ちてしまう

(夢なのだから)

そう自分に言い聞かせて
またかなしささえ諦める

さくり、さくり、
ゆっくりと足を差し出しながら歩く
空ではうっすらと
月が明け方の爪あとを残している

何処へ行きたいのだ



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