空を掘る/朝原 凪人
晴れた休日の朝
シャベルで宙を掻いている男に出会った
都会の街中の少しだけ開けた場所
陽光は空気中の水分に乱反射し
景色に鮮やかな色を落としていた
平和すぎる風景の中
男はシャベルを掻いていた一心不乱に
ネクタイを締めたスーツ姿で
「何をしているんです?」
私が尋ねると
「観て解らないのかい?」
男はズボンのポケットから取り出した
黒と灰色のストライプ柄のハンカチで
汗を拭いながら答えた
「空を掘っているんだよ」
「空を、掘る?」
男は少し照れくさそうに笑うと
再びシャベルを動かし始めた
ホーホーホホー鳩が長閑(のどか)
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